公開: 2020年5月16日
更新: 2020年5月18日
古い日本語にはスコープやステークホルダーを意味する言葉はありませんでした。それに近い言葉は、中国から漢字が入って来てから、日本人の一部で使われるようになった「条件」や「状況」のような意味の「漢語」系の言葉です。このようなことから、鎌倉時代以降、日本人の一部では、ものごとを漢語を使って考える習慣が根付きました。しかし、その漢語の言葉にもないような、西洋の言葉が表す意味を日本語で書き表すためには、漢字を組み合わせて、新しい言葉を作る以外にありませんでした。
「倫理」や「裁判」など、明治時代に数多くの新しい言葉が作られました。これらの言葉が、ヨーロッパから入って来るまで、日本人には、その言葉が何を意味するのかや、なぜそれらの言葉が必要なのかは、見当もつかなかったのです。確かに、「倫理」に近い言葉は、「道徳」であり、「裁判」に近い言葉は、「お裁(さば)き」などがありました。ただ、「道徳」も「お裁き」も、倫理や裁判に似た意味を持っていた言葉ですが、深く考えると、違った意味の言葉だったので、新しい漢字の組合せで、新しい言葉が作られました。
「スコープ」や「ステークホルダー」などの言葉が意味するものも、これまでの日本語にはありませんでした。20世紀の日本の専門家達は、そのような言葉を日本語で表すために、英語などの「もともと」の言葉の発音を、カタカナで表す使うようになりました。スコープは、英語のscopeの音をカタカナで表したものです。スコープやステークホルダーが意味することを、古い日本語で言うと、「ものごとに思いをめぐらせる時、そのものごとに関(かか)わる「こと」で、慮(おもんぱか)っておかなければならない「もの」や「こと」」となるでしょう。そのなかでも、特に人に関わることが、ステークホルダーです。